課題の多いアニメ業界の現状とこれからの展望

人手不足などで納期に間に合わず、毎週ギリギリの状態でオンエアしていたり、1週分オンエアが見送られることもあったりするのが昨今のアニメ業界の現実。それらを改善するため、3DCGを使ったアニメの制作が進められています。従来の手描き2Dでは独自の技術で平面を立体的に見せる書き方をしていましたが、必要な線や描き込みが増えてしまい、アニメーターの工数や技術的な負担の増加が問題視されていました。立体表現に強い3Dを取り入れればPC上でカメラの位置や動きがつけられ、動きのバリエーションが簡単に増やせます。これが作業効率アップにもつながると、さまざまなアニメスタジオで3Dの導入が始まっています。

日本の3Dアニメは2Dに慣れ親しんでいるアニメファンに合わせ、独自の進化を遂げてきました。CGでありながらも塗り方や陰影を2Dのように見せるトゥーンレンダリングという技法を使っており、アニメを見慣れていない人がパッと見ただけではどこが3Dなのか分からないほどのレベルの高さです。

今まで以上に3D化が進んでいくと予想される中、デジタル作画に対応できる若い人材をどうやって獲得するのか、というのも今後の課題の1つ。HALのCG映像学科などさまざまな専門学校に出向いて採用している企業も出てきています。こちらの学科の3DCGクリエイター専攻では、各種デジタルツールを使いこなす技術やモデリング、3DCGアニメによる表現力などの制作スキルを身につけた即戦力となるような人材育成を行っているため、プロからの注目も集まっているようです。

ただ、現場の効率が上がったとしても作品自体のクオリティが高くなければ売上として還元されず、現場がただ疲弊してしまうだけです。若い世代に質より量という考え方だけでとにかく制作させ、それに耐えきれなくなったら放出するというやり方を見直し、将来を担う若い世代のバックアップをしていくことが大切になります。3DCGの導入がアニメ業界の体制を建て直すきっかけになることを信じてやみません。